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名古屋の会社を強くする労務ブログ

2017/04/10

現物給与の労務と税務は少し違います(社宅編)

◆ 社宅を無料で社員に賃貸する イコール 住宅手当の支給と同じ

給与明細に『住宅手当』として金額が書いてあれば、それは所得税と社会保険・労働保険の対象となります。その一方で会社が社宅を保有または賃借して、社員に貸す場合はどうなるのでしょうか?

 

答えは、一定の算式で計算した金額を社員から徴収(給与から天引き)すれば所得税と社会保険(労働保険も含む)の対象とはなりません。いわゆる社宅扱いにすると、社員の税金・法定福利費は増えないわけで、社員としてはありがたい扱いと言えます。また、会社側も法定福利費が増加しないというメリットもあります。

 

ここまでは、知っているよという方も多いと思いますが、実はこの『一定の算式で計算した金額』は、税務署と年金事務所とでは回答が違います。どう違うのかを比較してみましょう。

 

◆ 先ずは、税務の算式をチェック

所得税法に定める下記の金額合計×50%を上回る賃料を社員から天引きしていれば、社員に所得税はかかりません。社宅賃料等が現物給与(住宅手当)と認定されることはないわけです。

(1) (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%

(2) 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3?)

(3) (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

 

固定資産税の課税標準額を知るのが一苦労ですが、現在は借主の権利として市役所へ出向けば、物件の課税標準額を知ることは難しいことではありません。

 

(参考)名古屋市での評価証明・物件証明の申請

実際の賃貸借条件(賃料)は様々なので確約はできませんが、実際にこの計算式で算定した賃料は、ざっくりですが実際の大家さんに払っている家賃の3割前後となることが多いです。目安として3割は社員さんからもらわないと課税を受けてしまう可能性が高いと憶えておくと良いでしょう。

 

なお、固定資産税の評価額(課税標準額)は、3年に一度見直します。3年間は上昇することはありません(地価の下落局面では下がることはありますが、通常は変わらないと理解して良いでしょう)次回の評価替えは平成30年度、平成33年度に行われます。

 

◆ 次は、社会保険の算式をチェック

さて、社会保険の算式は、居住スペースの面積÷1.65?×1470円(愛知県の場合 平成29年4月以後の金額)で計算します。都道府県ごとに金額は異なります。ちなみに東京では1470円ではなく、2590円と規定されてます。愛知県と東京都では賃料に相当の差があるわけですね・・・。給与の額面も東京の方が水準が高いのは仕方ないことだと理解できます。ちなみに一番低いのは青森の940円です。老後は青森で暮らすとお得だな・・・といろいろ考えてしまいます(笑)

(参考)現物給与の価格

 

さて、この居住スペースですが、純粋な居住の場所だけを指します。具体的にはキッチン・トイレ・玄関・お風呂・廊下のスペースは含めませんので計算するときは注意しましょう。

算式で計算した金額を天引きしていない場合は、その差額(計算額—実際の天引き額)が現物給与として、社会保険料を決める報酬月額に含められることになります。

 

◆ 現実には、税務の算式が優先される?

よって、社宅の賃料を社員から天引きする場合は、正しくは上記の2つの算式を共に計算する必要があります。

 

理論上は、物件次第でどちらの方が高くなるとはいえません。税務が固定資産税評価額で計算する関係で、築年数が新しい物件の場合は税務の算式で計算した方が高くなる傾向はあると推測されます。逆に古い物件だと固定資産税評価額は低くなるでしょうから、社会保険の算式で計算すると物件の築年数に関係なく、単価(1470円)は固定のため、税務の算式で計算した方が低くなる傾向はあると言えます。

 

年金事務所の調査で社宅賃料にまで言及されるケースは稀なので、ほとんどの会社が税務の算式にて計算していることが多いとは思われますが、今後、年金財源の問題が大きくなるほど、このような論点もチェックの対象となっていくのかもしれません。

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