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2012/07/24

2012/No.07 知っておきたい会社設立のポイント

『会社を作りたいけど、株式会社以外の会社ってあるの?できるだけ安く作りたいな。』会社設立のご相談をいただく場合、現在の主流として3つの形態があります。今回はその3つの会社組織についてポイントを抑えてみましょう。

◆ 会社形態を比較してみよう

株式会社がもっともポピュラーですが、最近では、コスト面を重視して、合同会社・一般社団法人を選択するケースも増えています。それぞれの特徴を比較してみましょう。?(2016.4.1現在の法令に拠ります)

 

  株式会社 合同会社 一般社団法人
設立費用(※1) 202,000円 60,000円 112,000円
設立時の定款認証 必要 必要なし 必要
役員の呼称 取締役 業務執行社員 理事
代表者の呼称 代表取締役 代表社員 代表理事
通常の議決権(※2) 所有株式数により
決定
1社員につき1票 1社員につき1票
最低資本金額 1円 1円 ゼロ円でも可
利益の分配(配当) 可能 可能 できない
設立時の最低出資者数 1名 1名 2名
最低役員数(※3) 1名 1名 1名
役員の任期 最大で10年 任期の制限はなし 最大で2年

 

※1.上記設立費用は、電子申請・電子定款認証手続きを行う場合の法務局・公証人役場へ支払う最低実費です。司法書士等に代理手続きを依頼する場合には、別途報酬が生じます。

※2.合同会社・一般社団法人では出資者のことを社員と呼びます。いわゆる従業員のことではありません。

※3.株式会社では、役員に監査役(一般社団法人の場合は監事)を設定することも可能ですが、法定必須事項ではありません。弊社での設立手続のサポート事例では、監査役を置かない会社が主流になっています。

◆ 合同会社の特徴

設立時に公証人役場での定款認証手続きが不要なため、もっとも設立コストが低いのが合同会社を 選ぶメリットといえます。役員の任期を定める必要はないため、任期満了に伴う役員改選時の登記コストも不要です。とにかくコスト重視で会社を作るだけなら、合同会社を選ぶべきでしょう。なお、合同会社でスタートすることのデメリットとして良く耳にするのは、下記の2つです。

① 出資者=業務執行社員 であること。株式会社のように、出資はするが取締役には就任しない
という選択(経営と資本の分離)ができない。

②『代表社員』という呼称のため、営業上、誤解を受けることがある(従業員だと誤解される)

残念ながら合同会社の認知度が低いため、最初は合同会社でスタートするが、事業が軌道に乗ったら株式会社へ組織変更するケースも現実的には多いです。認知度の向上を期待したいところです。(ちなみに、誰もがご存知のスーパーマーケット『西友』も、実は合同会社です。)

ただし、最近では最初から株式会社を選択する方が、結果として組織変更のコストもかからないため、現実的だと思われます。会社を今後も続けていくのであれば、ネームバリューの高い株式会社を最初から選択すべきでしょう。

◆ 一般社団法人の特徴

一般社団法人について敷居が高そうなイメージを持たれる方もいるかもしれませんが、株式会社や合同会社と税制上の扱いは同じです。通常の営利ビジネスを行う上では、税金が安くなるような優遇規定はありません。イメージとしては、『登記費用が安く済む株式会社』と考えても良いと思います。資本金(出資)がゼロ円でも設立可能な点が特徴です。ただし、設立時には、社員(出資者)が2名必要となるため、1人で会社を興したい人には不向きです。第三者と一緒に会社を作るケースでは、株式会社のように、出資額に応じた議決権(決定権)の設定ができないので注意が必要です。(なお、出資額に関係なく、社員ごとに異なる議決権数を付与することは可能です。定款の記載が必要です。)

2008年12月1日より非営利法人に関する法律が改正され、公益性がなくとも登記だけで一般社団法人が作れることになったことから、最近では、通常の営利ビジネスにおいて、一般社団法人を選択するケースが増えてきています。社員と理事は兼務が可能なため、最低2人の社員さえ決まれば、出資ゼロでも一般社団法人が設立できることになります。夫婦で会社を作るときなどにも適しているといえます。

一般社団法人には、『基金』という資金の受け入れ形態があります。資本金のようなイメージを受ける方が多いのですが、登記事項でもなく、基金拠出者に対し返済する必要があるものです。つまり、単なる借金(債務)とお考えください。ただし、返済義務は純資産を超過する部分に限定されますし、他の債務への返済が優先されます。返済順位の低い劣後債務(資本性の高い債務)となります。資本金ではないため、設立時に基金の額が1,000万円以上となっても、株式会社のように消費税の申告義務が生ずることはありません。

ちなみに、一般財団法人という形態もありますが、この場合は300万円以上の出資が必要となること、更に役員が7名(理事3名・評議員3名・監事1名)必要となることから、ビジネスをシンプルに、早くスタートさせたい方には不向きです。一般財団法人は、純資産額が2年連続300万円を下回った場合は解散となるため、この点を考えても一般ビジネスに使う組織形態としては不向きだといえます。

◆  一般社団法人から株式会社への変更はできない。

『とはいえ、いつかは株式会社にしたいよね。』設立時は、合同会社・一般社団法人を選択されても事業が軌道に乗ってくると株式会社に変更したいというニーズがでてくることが通常です。ここで一点だけ注意が必要なのは、一般社団法人から株式会社・合同会社への組織変更はできないのです。合同会社→株式会社への組織変更はできます(登記費用は必要です)。これに対して、一般社団法人→株式会社への変更はできません。また、一般社団法人が他の株式会社を吸収合併することもできません。

◆  会社をやめたいときにもコストがかかる

会社を設立した後で、『この会社を使わなくなったので無くしたい』というご相談を受けることがあります。会社清算といいますが、清算にもコストが必要となります。清算登記には前準備として『解散登記』が必要となり、解散登記日より最低2ヶ月の債権申出期間を経ないと清算登記ができないため、実務的には、清算手続きには最低3ヶ月程度はかかります。また、解散時・清算時ともに税務署への確定申告が必要となります。つまり、会社清算には、登記も申告も最低2回必要となるわけで、設立と違って相当の手間がかかります。設立時よりも、やめるときの方が、コストがかかると考えた方が良いでしょう。

 

文;税理士・社会保険労務士 奥田正名

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