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2012/09/22

2012/No.09 節税の入口と出口を考えていますか?

節税になると聞いて実行はしたものの、その後、想定していた効果が得られないことや逆に税金が増えてしまったということがあります。今回は、節税プランの入口と出口を考えてみたいと思います。

◆ 入口と出口の両方を考えること

例えば、法人加入の医療保険のケースで考えてみましょう。下記の内容で、被保険者である社長が入院することになった場合、入院費用の補填として保険金がもらえます。保険料を会社で損金にするために会社で加入。保険金は会社で利益(益金)になります。

 

契約者は・・・ 会社(法人)
被保険者は・・・ 代表取締役(社長)
受取人は・・・ 会社

 

社長が手術を伴う入院をすると会社に保険金が入ります。ここまでは良いのですが、その保険金を社長に渡したいときに、税務上の問題が生じます。渡した金額が見舞金としての相場を超えていると、その超えている額は『役員賞与』と認定される可能性がでてくるのです。下記の裁決事例によれば、会社が見舞金として支払った額のうち5万円までは福利厚生費、5万円を超える部分は役員賞与と認定されています。役員賞与となると損金にできないし、源泉所得税も取られるダブルパンチ課税となってしまいます。(法人でも個人でも課税を受けることになります)

役員に対する見舞金は入院1回あたり5万円が相当と判断 (国税不服審判所2002年6月13日裁決より該当箇所を抜粋しました)

取締役会長に入院中に支払った見舞金が福利厚生費にあたるか否かが争われていた審査請求事案で、見舞金については類似法人に比べて5万円を超える部分の金額は賞与にあたると認定する裁決を下ししています。この事案は、建築工事業を営む同族会社が取締役会長に支払った見舞金が賞与等に該当するか否かが争点になったもの。見舞金が役員賞与にあたると認定、過少申告加算税の賦課決定処分、納税告知処分等をしてきたため、審査請求人である同族会社がその取消しを求めて審査請求していた事案です。

裁決は、見舞金については類似法人の支給状況を比準の上、福利厚生費としての見舞金の上限は入院1回あたり5万円が相当と認定、その額を超える部分については取締役会長に対する賞与に該当すると認定、請求人の主張を斥ける裁決を下しています。

 

会社が保険に加入する時点(入口)では、『社長が入院したときの医療保険を会社で損金にできる』ということだけ考えて、保険加入してしまうことが多いと思いますが、保険金が入ったとき(出口)に、その保険金の全額を社長に渡すことができない(渡すと課税を受ける)ということになります。もちろん5万円という金額が税法で規定されているわけではなく、この裁決での結論に過ぎないのですが、考え方としては、保険に入っていない社員や他の役員にも同様の入院があったときに、同じ見舞金額を支払うだろうか?という視点で考えると分かりやすいと思います。業務外傷病の見舞金は1万円〜3万円程度で留まるケースが一般的だと思われます。

医療保険だけでなく、生命保険やレバレッジドリース等の『課税先送り型の節税商品』も支払時に損金になるかどうかだけで判断しがちですが、実際に入金があったときの処理の仕方について充分検討されてから加入した方が良いでしょう。

◆ 中小企業倒産防止共済(セーフティ共済)は、入口と出口の両方が

コントロールできる

保険やレバレッジドリースと違い、中小企業倒産防止共済は掛金が全額損金になる上で、実際の入金時期(解約時期)は自由に選べます。加入後40ヶ月以上経過していれば、掛金は100%返金されますし、解約時期は自由に選べます。課税先送り型の節税商品としては、もっとも優れていると言って良いでしょう。掛金の最高額が月額20万円(年額240万円)なので、生命保険やレバレッジドリースに比べると節税額には限界がありますが、出口のコントロールがしやすいメリットがあります。掛金額も途中で減額が可能なため、加入後に資金負担が厳しくなった時でも続けやすい点もお勧めです。唯一の難点は、設立第1期の法人は加入できないことです。事業開始後1年以上経過している事業者でないと加入できません。個人事業者についても同様です。

◆ 相続時精算課税を選択したとき

贈与税をゼロにできる相続時精算課税という制度があります。65歳以上の両親等(直系尊属)から財産を贈与された場合、子ども(孫)が20歳以上であれば贈与財産が2,500万円までは贈与税がゼロになる制度です。この制度は、贈与税の繰延制度だと考えると理解しやすいです。つまり、贈与税はゼロだけど、両親が亡くなった時点で、贈与財産は相続税の対象財産となり、相続税が課されます。つまり、次の場合以外では、相続税対策にはならないわけです。

相続時精算課税が、有効となるケースとは・・・

 

① 課税財産が多くなく、もともと相続税が生じない。

→相続税対策は不要だが、とにかく財産を贈与したい場合に有効。

② 贈与後に、財産価値が上昇する場合(例;贈与後に土地の時価が上がる)

→相続時ではなく、贈与時の財産価格で相続税を計算するためです。

 

相続時精算課税を一度選択すると、後で取り止めることはできません。相続時精算課税の適用を受けた贈与をした両親等から、今後贈与される財産の合計額が2,500万円を超えると、強制的に一律20%の贈与税を払うしかなくなります。『年間110万円までの贈与なら、贈与税は非課税』という原則が適用されなくなるので注意が必要です。(ただし、支払った贈与税は、将来の相続税から差し引きます。つまり、相続時精算課税を選択した後の贈与税は、相続税の前払いともいえます。もちろん 相続税<贈与税になれば、払い過ぎた贈与税は還付されます。)

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とりあえず目先の税金が安くなる、という情報だけで選んだ節税プランは、後で取り返しがつかなくなることもあります。節税プランの出口を考えた上で、慎重なご選択をお願いいたします。

 

文;税理士・社会保険労務士 奥田正名

 

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