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2015/12/27

非上場株式を時価より安く買いたたくと、贈与税がかかる

唐突ですが、相続税法第7条の記載を見てみましょう。
(かっこ書きは、支障がない限り省略します。)

(贈与又は遺贈により取得したものとみなす場合)

第7条 著しく低い価額の対価て財産の譲渡を受けた場合に おいては当該財産の譲渡があつた時において、当該財産の譲渡 を受けた者が、当該対価と当該譲渡があつた時における当該財産の時価との差額に相当する金額を当該財産を譲渡した者から 贈与により取得したものとみなす。

要は、贈与ではないけれども、あまりにも安い価格でモノを買うと 適正価格(時価)と買値の差額だけトクをしたのだから、その トクした部分に贈与税を課するよ、ということです。

200万円の価値(時価)のモノを1万円で買ったら、199万円 は贈与税の対象になるということです。

さて、本題。 いわゆる非上場株式(同族会社の株式)ですが、この株式を時価より低い価格で買い取ったとして、贈与税を 課することが妥当だと判断した判例があります。この場合の時価は、財産評価基本通達により計算した価格です。 非上場株式なので、通常、流通時価はありません。よって時価とは なんぞやと問われれば、何らかの計算を自らする必要があります。

今回の判例では、財産評価基本通達により算定した額の15%〜 20%程度の価格を時価として申告した事例です。

(みなし贈与/低額譲受け) 
甲社の代表取締役社長である審査請求人が、複数の株主か ら、甲社株式を額面金額の250%の価額で譲り受けたことにつき、時価と譲受価額との 差額について、相続税法第7条の適用があるとされた事例(平成10年分及び平成11年 分の贈与税の各決定処分及び無申告加算税の各賦課決定処分・一部取消し・平17年1月 19被裁決)【東裁(諸)平16−179】

この判例は、時価イコール財産評価基本通達にて算定した額 という位置づけをしています。原告が価格算定の合理的な根拠を示せなかったことに対して、裁判所は下記の判断をしています。

納税者の本件株式の譲受けは、主として納税者の都合により進められ、買取りの 申出から価額設定に至るまで、常に納税者が主導的立場に立っていたのであって、 譲受価額は、納税者が、一方的に決めた価額であり、買取価額の設定をする際に 合理的な方法に基づく計算を行った事実も認められず、株式の譲渡人においても A株式の客観的交換価値を把握することは困難であったこと等によれば、株式の 譲受価額はその客観的交換価値を正当に評価したものとはいえないため、本件に おいて、財産評価基本通達に定められた評価方法を画一的あるいは形式的に適用 することによって、かえって実質的な租税負担の公平を著しく害し、相続税法 あるいは評価通達自体の趣旨に反するような結果を招くというような特別な事情 は認められないことから、本件の株式の時価は、評価通達の定める方法によって 評価すべきものである。

ここからは私見ですが、世の中には、非上場株式の買い取り(出資を含む)をする際に、 DCF(ディスカウントキャッシュフロー)法や収益還元法とかの、税法が認めていないが、 一般的に使われている時価(適正価格)の算定方法がありますが、税務の世界では、先ず財産評価基本通達での価格を意識しないといけないでしょう。 つまり、他の算定方式で計算した時価>財産評価基本通達で計算した時価 なら問題は ないのですが、他の算定方式で計算した時価<財産評価基本通達で計算した時価だと、問題になる可能性が高いわけです。

このあたり、反論される方もいらっしゃると思うのですが、判例では財産評価基本 通達で計算した価格を妥当だと判断しています。他の判例もあるので、よろしければ 確認してみてください。 他の判例はこちら(リンクで申し訳ないですが) 実際、自分でDCF法で計算すると、将来業績見込みと割引率をテキトーにいじくれば、 価格はいくらにでも調整することができることが分かるでしょう。つまり、客観性に乏しい 計算方法です。現在時価を反映させているものとは言い難いと思います。強いて言えば、現時点 での『期待値』かな?しかも人によって異なる期待値。

税務にかかわる者として、これらの判例と相続税法第7条のことは、やはり押さえて おきたいところですね。

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