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2015/12/08

ホステスに支払ったおカネは、給与に該当するのか?(給与と外注費の境目を考える)

いわゆるホステス報酬について、それが給与になるか外注費になるのか?参考になる裁決(国税不服審判所での判決。裁判所ではないです)が公開されたので、メモとして記しておきます。

なぜ、ホステス報酬を取り上げるかと言いますと、給与となるか外注費(事業所得)となるかの判例には、関心があるからです。この論点が生ずる場合、必ず耳にする言葉があります。
「うちの業界は、どこでもこういうやり方ですよ。」

この言葉で、思考停止してしまう税理士さんも多いと思いますが、税法に業界固有の事情を認める規定はありません。業界の特殊事情は、実は特殊事情ではないのです。 どこの業種の人に聞いても、その業種ごとの事情があります。ある業種だけが特殊というわけではないのです。 で、本題ですが、平成26年7月1日付の非公開裁決のポイントを簡単に整理してみます。?

① 業種は、いわゆるスナック。

ホステスに払うお金を納税者は、ホステス報酬として処理していたが、税務署はホステスの   稼ぎ方と責任負担(いわゆるツケ払いの売掛金回収)の違いに応じて、給与とするものと   従来通りホステス報酬(事業所得)とするケースに分けました。納税者は敗訴しています。

② 時給または日給で払っているホステス報酬は、給与として認定されました。 また、変動インセンティブとして、同伴料(1回あたり2,000円)やポイントチャージ などの、時間と連動しない支払いについても、給与として認定されています。

審判所は 「一般の給与制度にもみられるような各種手当が支給された程度のもの」と判断して います。 求人上も、「服装自由」となっており、特殊な準備はホステスに求められておらず、   また勤務時間外(お店にいない時間)に、顧客と食事に付き合ったり、プレゼントを   送ったりするなどの何らかの費用負担はあるものの、それらが納税者からホステスに 支払った金銭との間の直接的な関係はないと、しています。 いわゆる美容代や衣服代をホステスが負担していても、そこは考慮されていません。 むしろ、下記の判断を下しています。

 「接客業務のために美容代・衣服代を自己負担していることは認められるが 、それは、給与所得者
(サラリーマン)であってもみられる」   

サラリーマンでも、自腹で背広や靴を買うでしょ、ということですね。 なお、このホステスには、いわゆるツケ(未回収売掛金)の回収責任は求められていません。 この判例では、この未回収売上の回収責任をホステスが負っているかは 大きなポイントとなっています。

③ 売上に応じた歩合で払っているホステス報酬は、事業所得として認定されています。

売上代金の50%相当額を歩合報酬として受け取っています。自分の顧客からの売上に ついてのみ対象としていたようで、他のホステスの顧客を接客したときの売上は歩合の 対象にしていません。 そして、顧客からの未回収金が生じた場合は、報酬から天引きされています。

売上について自己責任を負っているということです。ちなみに後に回収された 場合は、天引きされた金額は返金されています。

 

ホステス報酬が、事業所得と認定されるには・・・
①売上が完全歩合
②時給・日給などの、いわゆる保証給はありえない
③代金回収のリスクをホステスが負っている、の3点が必要
と考えても良いでしょう。

代金回収リスクを負うということは、いわゆる法人顧客(会社へお店から請求書が 届くようなケース)が相手になるようなケースだと思われます。今時、個人客なら カード払いで終わりですよね、大抵は。

そういう意味でも裁決は、妥当な内容だと個人的には思います。至極まっとうであり、更に次のように も判断されています。

「支払った金員の計算方法が業界として一般に行われていることのみで給与等に 該当するか否かが決まるものではない。」

というわけで、税法は業界の特殊事情を考えてくれる法律でないことをご理解 いただくには、良い事例だとは思います。とはいえ、この業種の方々の税負担 が、大幅に増えることは間違いないのでしょう。 もちろん、給与と認定されれば、消費税の負担も自動的に増えることになる のでお忘れなく・・・・年間ホステス報酬×8% の追加納税と考えると インパクトは大きいですね。売上の50%以上はホステスへの支払いでしょうから 、売上×50%×8%=売上の4%が追加納税となると、試算しても良いでしょうね。

(参考)  (源泉徴収義務/ホステス報酬の給与該当性)
各ホステスは、出勤表やタイムカードに より管理され、請求人の指揮命令に服して労務又は役務を提供し、その対価として月払に より金員を支給されていたものであるから、請求人がホステスに支払った金員は所得税法 28条1項に規定する給与等に該当するとした事例(平成21年から平成24年までの各 期間分の源泉所得税の各納税告知処分及び不納付加算税の各賦課決定処分、平成21年か ら平成23年までの各課税期間分の消費税等の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課 決定処分・棄却・平26−07−01裁決)
?【東裁(諸)平26−1】【情報公開法第9条第1項による開示情報】

この考え方は、個人外注を使っている全ての会社に意識してほしいところでもあります。ホステスさんの世界だけの話ではないのです。

安易に外注費処理をする前に、先ずはご相談を!

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