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2014/10/15

2014/No.10 役員退職金の都市伝説を検証する〜その2

NO.8に引き続き、役員退職金額の決定方法について整理してみました。経営者の長年の功労に対して充分な退職金を支払いたい。ついでに節税もしたい。でも、退職金は通常○千万円〜○億円にもなる。それがもし経費と認められなかったら・・・・。その不安を解消するには、先ずどんな判断が税務の現場でなされているかを知ることから始めましょう。

◆ 役員退職金の算定方式は、法律で定まっていない。

役員退職金の適正額はどうやって計算するの?と問われれば、99%の税理士は、功績倍率法を示すでしょう。具体的には、下記の計算式となります。

●功績倍率法での適正退職金額

妥当な退職金額 = 退職時の報酬月額×勤続年数×類似法人の平均功績倍率

 

実は、法人税法には上記の計算式の記載は一切ありません。しかし、税務調査等の実務の現場では 専らこの計算方式が採用されます。理由としては、裁判所や国税不服審判所での判例では、この方式で計算される例が多いためだと推測されます。上記の金額で算定した金額よりも、高い退職金額の場合には、その超過額は会社の経費(損金)として認められません。

しかし、算式があるからといって計算が簡単なわけではありません。上記算式のなかの『類似法人の功績倍率』は、国税庁が公表しているわけではないからです。実務の現場において、この功績倍率をいくらにするのかは、難しい論点です。

◆ 功績倍率は、3倍ならOKというのは本当か?

『功績倍率は、3倍なら問題はない。』退職時の月給が100万円、勤続年数20年の社長なら100万円×20年×3倍=6,000万円なら経費と認められる。根拠はさておき、これは通説としてよくいわれています。なぜ、3倍ならOKといわれるかは明確な理由は明らかではありませんが、功績倍率について争われた、最初の判例と言われている事件が3倍で決着しているからだと思われます。(参考:東京地裁昭和44年(行ウ)第84号法人税課税処分取消請求事件。)

とはいえ、退職金額はその時代の景気環境でも変わります。不況のときは、金額も当然下がります。功績倍率については、前述したとおり公式な指標は存在しませんが、市販されている民間会社の統計資料を見ていると、代表者の功績倍率平均は2倍程度という記載もあります。もちろん、統計を取る上での母数も少ないので、世の中の退職金実態を正しく表しているとは限りませんが、弊社では功績倍率の根拠資料として採用するケースもあります。もちろん平均ですので、もっと高いケースも低いケースもあるわけです。ちなみに、税理士業界では、有名なTKCの統計データにより3.0倍を採用した会社が敗訴しているケースもあります。(1.18倍が妥当と平成25年3月の判決で、比較的新しい事例ということもあり、注目される事例でもあります。)

◆ 比較的、新しい判例の功績倍率を知っておこう

昭和の年代と現在では景気環境も異なります。平成20年以後の判例で採用された、比較的新しい功績倍率事例をチェックしてみましょう(今回は、代表者に限定します。)

 

裁決時期

退職理由

計上退職金

認定退職金

勤続年数

採用倍率

月額報酬

平成25年3月22日

死亡

6,032万円

490万円

13

1.18

320,000円

平成23年1月24日

死亡

6,615万円

935万円

7

1.91

700,000円

平成22年11月12日

死亡

10,000万円

4,293万円

27

3.18

500,000円

平成21年5月19日

死亡

14,000万円

2,175万円

15

2.90

500,000円

平成21年2月26日

死亡

26,100万円

19,425万円

37

3.50

1,500,000円

平成20年12月1日

死亡

11,200万円

6,370万円

14

3.50

1,300,000円

3.50倍の功績倍率が採用されたケースでは、参考にすべき判断が1点あります。それは、判決文に記されている下記です。創業者については、やはり相当の功労を認めた倍率を採用すべき、との 判断がされています。創業者は、3.0倍を目安とした功績倍率を考えても良いといえる事例です。

 

『創業者の功労等、報酬額に相当の影響を及ぼすと考えられる事情は、税務署側の平均値算出過程で基本的に考慮されていなかった。税務署(被告)は、創業者としての功績は、一般に勤続年数の長短及び最終報酬月額に反映されているとも主張するが、そうであるとしても、功績倍率の相当性を検討するに当たり、創業者としての功績を全く考慮しないでよいことにはならないというべきである。』   ※一部文言は、対象者を分かりやすくするために原文と変えています。

 

◆ 直前給与が低い場合の対処法

功績倍率法で唯一客観的なのは、勤続年数(登記情報で分かる)だけで、退職時の報酬月額を採用 することの是非もあると思われます。一般的に退職時の報酬月額が高いほど、貢献度が高いと考えられ、退職金額が高くなっても問題はないと考えるわけですが、景気環境により一時的に報酬を下げざるを得ない時期と退職時期が重なることもあります。そういった事情の場合、最終報酬月額が低いと 多大な功労があった人でも退職金額が低く計算されることになります。そういった場合には、理論的には、下記の計算方法を採用することになります(この算式も法律上、明文はありません)

●1年当たり平均額法

妥当な退職金額 = 類似法人の退職給与の1年当たり平均額×勤続年数

 

とはいえ、類似法人の退職給与の抽出は難しいといえます。規模も業種も同じ水準の法人が支給する退職金の 平均額というのは、把握が困難です。税務署以外では知る由もないでしょう。このような場合での弊社の取組事例としては、過去何十年間かの退職役員の平均給与月額を計算して、それを報酬月額として功績倍率法で計算したケースもあります。退職直前の給与が貢献度を適正に反映していない場合は、何らかの筋の通った計算資料を用意しておくことが望ましいです。なお、在任期間における最高報酬月額を基に計算した例では、納税者敗訴となる訴訟があるので避けた方が良いでしょう(参考:国税不服審判所裁決(熊裁(法)平22第6号、平成22年11月12日裁決)。

 

役員退職金の多寡の判断は、類似法人の情報が税務署側にしかなく、納税者側には難しい判断です。そのなかで判例を含めた相応の根拠を揃えた功績倍率を検討し、自信をもって税務署に根拠資料を提示する必要があるでしょう。

文:税理士・社会保険労務士 奥田正名

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