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2015/11/20

2015/No.11 同族会社は、社長の株式と仕事をスムーズに承継させる

会社の後継者を誰にするか。経営者にとって大きな悩みの一つではないでしょうか。後継者は決まっているが、株式の引継ぎが終わっていない。このような場合、どのように後継者に株式を引き継がせるか、相続税対策も含めて、後継者に会社をスムーズに引き継がせる方法について解説していきたいと思います。

◆ 会社の決定権は株主にある

会社の所有者は、その会社の株式を保有する株主であり、最高意思決定機関は株主で構成される株主総会です。では、その株主総会で、どれだけの株式(議決権)を持っていれば、何を決めることができるのでしょうか?

①  特別決議

議決権の2/3以上が

必要

・定款変更、合併、解散・事業譲渡などの会社の

組織・業態に関わる事項

・自己株式の買取り(会社が自社の株式を買い取る)

・相続人に対する売渡請求

(株主に相続が生じたとき、自己株式を買い取る)

②  普通決議

議決権の1/2超が

必要

・決算の承認

・取締役、監査役の選任・解任に関わる事項

・取締役、監査役の報酬に関わる事項

◆ オーナー社長に相続が発生した場合の不安要素

その会社の株式を100%所有する社長に相続が発生した場合、安定経営のための議決権(株式)2/3を後継者が確保できるかがポイントとなります。つまり、相続人が複数いる場合、後継者以外の相続人に対しても株式が相続されてしまい、後継者が議決権の2/3以上を確保することができず、会社の経営が不安定になる可能性があります。 そうならないために、後継者に安心して、会社を引継いでもらうためにはどういった対策があるでしょうか?いくつか例を示したいと思います。


 

◆ トラブルを避けるためにできること① 〜暦年贈与〜

暦年贈与=通常の贈与です。年間110万円の非課税枠が設けられています。110万円を超えると、贈与税負担が生ずるので贈与する株式数は限られてはくるでしょうが、数年間に渡って贈与をしていけば、相当の株数が後継者へ 移管できます。 贈与税の税率<相続税の税率の範囲内で暦年贈与をしていくと、相続税の節税になります。


 

◆ トラブルを避けるためにできること② 〜相続時精算課税制度の活用〜

相続時精算課税制度は、通常の贈与とは異なり、一人あたり2,500万円まで贈与税の非課税枠があり、相続があった時に、その贈与された財産を贈与時の価額で、相続財産に合算して相続税を計算する制度です。贈与税の非課税枠が大きいので、株式を、生前に後継者にスムーズに引き継がせることができます。最終的には相続で税金は精算されるので、非課税ではなく、課税の先送りではありますが、経営が順調に進み、株価の上昇が見込まれる場合には、株式の価額を現在の低い価額で固定することができるので、相続税負担を軽減することも可能です。

暦年贈与・相続時精算課税については、いずれも遺留分(相続人が最低限財産を相続することができる権利)を侵害している場合には、せっかく贈与しても相続があった時点で他の相続人に株式が渡ってしまう可能性が残ります。遺留分を侵害させずに、後継者に株式を引き継いでもらうには、どうすればよいでしょうか?


 

◆ トラブルを避けるためにできること③ 〜贈与税の納税猶予+除外合意〜

贈与税の納税猶予とは、会社の株式の2/3を上限に、贈与者(先代社長)から後継者に対する贈与に対する贈与税について、納税が猶予される制度です。あくまで納税を猶予するだけで、これだけでは遺留分についてはクリアにはなっていません。ここに「除外合意」という取り決めを相続人間で事前に行うことにより、贈与があった株式については、 遺留分を計算する基礎から「除外」することが可能となります。後述する遺留分の放棄の手続きよりも簡素化されているため、合意さえ得られれば難しくない方法となります。また、贈与があった株式については、相続が発生した際に「贈与時の価額」で相続税を計算することになりますので、株価を贈与時の価額で固定することができます。


 

◆ トラブルを避けるためにできること④ 〜遺言書+遺留分放棄〜

前号のクライアントレターにも記載しましたが、株式を後継者に相続させる遺言書を残すことに加え、家庭裁判所で後継者以外の相続人に遺留分の放棄の手続きをしてもらうことで、後継者以外の相続人が遺留分の減殺請求(遺留分が侵害されている場合に、最低限の取り分を請求する手続き)をすることは起きません。つまり、確実に後継者に株式を相続させることが可能となります。


 

◆ トラブルを避けるためにできること⑤ 〜種類株式の発行〜

株式会社は、定款の定めにおいて、様々な種類の株式を発行することができます。例えば、無議決権株式と言われるものが代表例で、その名の通り「議決権がない」株式となります。大きく贈与すると贈与税の負担が大きいため、会社の株式の半分を無議決権株式にして、後継者に通常の株式(議決権のある株式)を贈与し、自分は無議決権株式を保有します。その後、相続があった場合に無議決権株式を後継者以外の相続人に相続しても議決権がないので、会社の経営には口を出すことはできません。無議決権株式については、議決権が無いことを考慮して、一定の条件下で評価額は普通株式の株価から5%控除した価額となります。


 

◆ トラブルを避けるためにできること⑥ 〜定款に「強制買取り」を定める〜

定款に「当会社は、相続その他の一般承継により、当会社の株式を取得した者に対し、当該株式を当会社に売り渡すことを請求することができる。」と記載することで、相続開始の日から1年以内に限り、会社が後継者以外の相続人に相続された株式を「強制的に」買い取ることができます。この場合、相続人が相続税の申告期限後3年以内に、自社に売却した株式(自己株式)については、20.315%の分離課税で税金を計算できます(通常、自己株式を発行会社に譲渡した場合は、他の所得と合算する総合課税で計算されるので、所得が高い方は分離課税の方が有利となります。)。


 

◆ もう一つの大事な承継 〜仕事の贈与〜

 

円滑に承継することがポイントになります。株式の承継だけでは事業承継が完了したとは言えないのです。事業承継 イコール 仕事と株式をスムーズに引き渡すこと、なのだと思います。 事業承継は「株式の承継」だけでは完了しません。事業を安定して継続していくためには、後継者に、「仕事を承継」させることが、もっとも重要です。経営者の仕事を一度棚卸して、経営者がどういった仕事をしているか文書化を行い、仕事を段階的に引継いでもらえるようにスケジューリングをするなど、後継者に仕事を円滑に承継する事業計画を立てることがポイントになります。株式の承継だけでは事業承継が完了したとは言えないのです。事業承継 イコール 社長の『仕事』と『株式』の両方をスムーズに引き渡すこと、なのだと思います。

文;岡田誠二

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