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2012/06/21

2012/No.06 知っておきたい新設法人の労務ポイント

前回のクライアントレター(No.05)では、新設法人の税務ポイントについてお知らせしました。今回は、新設法人の社長様が知っておいた方が良い労務のポイントについてまとめてみました。

 

◆  社長1人だけの会社でも社会保険加入は必要?

社会保険(健康保険・厚生年金保険)は、法人であれば社長1人だけの場合でも、加入が義務付けられています。社長であっても、従業員と同様に『法人に使用され、報酬(給与)を得る者』に変わりはないためです。但し、報酬がゼロでは加入することができませんので、役員報酬が決定された月から加入することになります。なお、非常勤の役員は、社会保険加入の必要はありません。

◆  パート・アルバイトは社会保険・雇用保険の加入は不要?

パートやアルバイトであっても、一定の要件を満たせば社会保険・雇用保険の加入は必要です。それぞれ下記の要件を共に満たす場合には、加入が必要です。

【社会保険加入の要件】

①1日又は1週間の所定労働時間が、正社員の概ね4分の3以上

②1ヵ月の所定労働日数が、正社員の概ね4分の3以上

 

もう少し分かりやすく細分化すると・・・・

1日又は1週間当りの労働時間 1ヶ月当りの労働日数 加入の必要性
正社員の概ね3/4以上 正社員の概ね3/4以上   有
正社員の概ね3/4以上 正社員の概ね3/4未満   無
正社員の概ね3/4未満 正社員の概ね3/4以上   無
正社員の概ね3/4未満 正社員の概ね3/4未満   無

 

例えば、正社員の1日の所定労働時間が8時間、週休2日制の会社の場合、パート等でも、1週30時間勤務、かつ1ヵ月の所定労働日数が17日以上の場合、??の要件を共に満たすため、社会保険の被保険者となるわけです。

【雇用保険加入の要件】

① 1週間の所定労働時間が20時間以上であること。

② 31日以上雇用される見込みがあること。

 

◆  入社日から社会保険に加入させないといけないの?

採用してもすぐに辞めてしまう人が多い昨今、社会保険料の半分は会社が負担しなくてはならないし、手続きも煩雑です。何か良い方法はないかとご相談いただくことがあります。原則として雇入期間の定めの無い雇用契約で社員を雇入れた場合は、即日加入が必要です。ただし、健康保険法の除外対象者として、『臨時に使用される者であって、2ヶ月以内の期間を定めて使用される者』があります。2ヶ月以内の有期雇用契約を締結し、期間満了で雇用契約を終了することが明らかな場合には、社会保険の適用除外となり加入は不要です。(但し当初の契約期間を超えて引き続き雇用契約が続いたら、その当初の契約期間を超えた日から加入の必要があります。)

◆ 扶養の範囲内(年収130万円未満)なら社会保険に加入しなくてもOK?

パート・アルバイト勤務の方の中には、配偶者の扶養の範囲内で働きたいと希望する方が多いと思います。しかしながら、いくら年収要件を満たしていても、労働時間・労働日数が正社員の4分の3以上であれば、社会保険の加入義務が発生してしまうので、注意したいところです。

〈夫が妻を扶養するケース〉

妻の勤務実態 保険加入の内容
労働時間・労働日数ともに3/4以上 妻が勤務する会社で社会保険に加入
労働時間・日数が3/4未満かつ年収130万円未満 夫の社会保険の被扶養者になる
労働時間・日数が3/4未満かつ年収130万円以上 妻が国民健康保険、国民年金に加入

 

◆  社長の業務上の事故は、労災の対象?

労災保険は、「労働者」の業務上及び通勤途上の災害について補償する保険です。社長や役員等は  労働者に該当しないため、原則として労災保険に加入することができません。それならば『現場作業中に事故したら、健康保険を使えばいいの?』という話になりますが、残念ながら健康保険は使えません。健康保険は、「業務外」の災害を対象としているからです。ただし、『中小事業主の労災の特別加入制度』に加入することで、保険料と労働保険事務組合への会費の負担はありますが、社長であっても労災保険に加入することができます。(※例外規定があります。注1をご参照ください。)

※注1 労災事故であっても、「健康保険が適用される代表者」とは、健康保険の被保険者が5人未満である会社の社長・役員であって、一般の従業員と同様な労務に従事している方が該当します。(平成15年7月1日保発第0701002号)

労災保険と異なり、治療費の3割負担が必要です。なお、傷病による休業が長期にわたる場合は、健康保険の制度として傷病手当金の給付がありますが、法人の代表者には適用されませんのでご注意下さい。

 

◆  試用期間中の労務ポイント

「採用したけど、いきなり正社員にするにはちょっと不安だ。」と考える場合は多いと思います。そこで、試用期間を設け、能力等を総合判断してから本採用するか否かを見極める会社は多いです。

(1)試用期間の長さはどのくらいが妥当?

法律で期間の定めはありませんが、3ヶ月〜6ヶ月程度とすることが多いようです。過去の判例では、「試用期間中の労働者は不安定な地位におかれるものであるから、労働者の能力や勤務態度についての価値判断を行うのに必要な合理的範囲を超えた長期の試用期間の定めは公序良俗に反し、その限りにおいて無効である(ブラザー工業事件)」と、1年超の試用期間は長すぎると判断されています。

(2)試用期間中に本採用を拒否する場合

試用期間中であっても、本採用を拒否する場合には「正当な理由」が求められます。裁判例では、 下記の場合、「正当な理由」として認められています。

・出勤率不良として、出勤率が90%に満たない場合や3回以上無断欠勤した場合(日本コンクリート工業事件

・勤務態度や接客態度が悪く、上司から再三注意を受けても改善されなかった場合(鶴屋商事事件)

・協調性を欠く言動から、従業員としての不適格性がうかがえる場合(大同木材工業事件)

・重大な経歴詐称や隠避が発覚した場合(日本精線事件)

 

なお、入社後14日を超えて使用した者を解雇する場合には、30日前の解雇予告または30日分の解雇予告手当の支払義務が生じます。また、試用期間中であっても社会保険や雇用保険の加入要件を満たしていれば、本採用後ではなく、入社日から加入することになります。

文;社会保険労務士 吉田彩乃

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