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頑張る会社をもっと強くする!節税ブログ
平成23年3月と、平成18年度を比較すると、愛知県内だけでも5年間で約6万人求人数が減少しています。このような厳しい雇用情勢を踏まえ、昨今、労働問題が発生しやすくなっています。「働き口が無いから、黙って働くだろう」というわけでは無く、むしろ逆です。「ウチは、今までこれでやってきて、トラブルになった事は無い」「業界の慣習だ」との主張をされても、労働基準法を持ち出されると、対処が難しい事例が大半です。今回は、労働問題を未然に防ぐためのポイントを、列挙していきたいと思います。
◆ 揉めないための、定額残業代設定のポイント
営業マンに対する「営業手当」等、定額の残業代を設定する事自体は問題ありません。ですが設定方法は何でも良いわけではなく、必ず押さえるべき4つのポイントがあります。
① 定額残業代が、何時間分の残業手当に相当するのかが、明確なこと
② ①の時間で、適正に計算した残業手当の定額残業代であること
③ 雇用契約書上で、①②の内容が把握できること
④ 設定した残業時間を超えたら、超えた分の残業手当を支払うこと
特に重要なのは?です。
した場合(残業時間単価 1,500円)
→ 1,500 × (40 − 30)
= 15,000円の残業手当を、追加で支払う必要があります。
つまり、定額の残業代を設定しても、④を把握するため、時間管理は必要です。同様に、いわゆる「年俸制」も同じ理屈で、時間管理は必要です。「時間管理不要の固定給制度は存在しない」と思って頂いて問題ありません。厳しい言い方で恐縮ですが、追加の残業代を支払わないようにするためには、設定した残業時間を超えないよう、業務内容を管理する以外に方法がありません。
◆ タイムカード改ざんのリスクは、思っている以上に大きい
そうは言っても現実問題、残業が発生してしまう。業務の見直しも簡単にはできない。その際に残業代を押さえるため、タイムカード上の出退勤時間を意図的に改ざんして、給与計算をする。これは最もやってはいけないことです。会社が、意図的に労働時間をカットしていることが、書面で明白になってしまうためです。タイムカードと賃金台帳を照合すれば、一目瞭然です。タイムカードの改ざんもそうですが、残業手当の未払は、最悪、経営者が逮捕されます。実際、平成15年に、特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人の理事長が、タイムカード改ざんの証拠を元に、労働基準法違反で逮捕されています。
◆ 揉めないために、退職時には必ず、退職事由の分かる書面を取ってください
どんな形の退職であれ、退職時には従業員から退職願・合意退職の同意書等の、退職事由の分かる書面を、必ず用意することをお願いいたします。最近では、メールやSNSを通じて、退職の意思を伝えてくるケースも多くなっていますが、それも書面と同様の効果をもたらしますので、プリントして残しておきましょう。退職後は赤の他人。会社的に自己都合退職だと思っていても、従業員側から解雇だと主張してくる事例は、昨今珍しくありません。解雇のような会社都合の退職ですと、いわゆる「失業保険」の受給額が増加する場合があり、なおかつ自己都合と比べて、失業保険を早く受給できます。場合によっては、解雇予告手当の対象になり、会社都合になった方が、従業員的には金銭メリットが大きいのです。このようなトラブルが起こった際に、書面が無いと「言った、言わない」で、トラブルが拡大する可能性があります。また、外部の労働組合や、労働基準監督署等の第三者が介入してきた場合、第三者に対しては、書面以外で退職事由を証明する方法がありません。トラブル防止のために、書面を必ず提出してもらうことを、心がけましょう。
◆ 契約書等の私文書の効力は、万能ではありません
「残業代は支払いません」という雇用契約書は、従業員の同意があれば有効なのでしょうか?答えは「無効」です。仮に同意があったとしても、労働基準法を下回る条件を定めた契約は、無効です。「欠勤1日につき、1万円の罰金を支払います」というような誓約書も同様です。要は「本人の同意(署名・押印)があれば、どんな条件でもOK」では無いのです。また、そのような労働基準法を下回る条件を定めた書面を、従業員に提示すること自体が、大きなリスクです。前述のとおり、第三者への立証は書面でなされ、会社にとって法的に不利な書面が第三者に渡った場合、会社としては抗弁ができなくなるためです。
◆ 試用期間中でも、入社から14日を超えたら、通常の雇用とほぼ同じです
試用期間は、文字通り「本採用までのお試し期間」で、期間は企業ごとに自由に定められます。ただし、試用期間であっても労働基準法は適用され、原則最低賃金(現状の愛知県ですと、時給745円)を下回ることはできません。また、試用期間終了後「ちょっと本採用は見送ろう」と決めた場合でも、入社日より14日を超えていたら解雇予告の対象になります。「本採用拒否=解雇」のためです。逆に言えば、「解雇予告不要の解雇は、入社後14日まで」ということになります。なお、試用期間中は、本採用時とは違う処遇(例 試用期間中は時給)で募集を掛けることは問題ありませんが、雇用保険・社会保険については、要件に該当すれば、原則入社日より適用になります。
◆ 残業時間と欠勤時間を、そのまま相殺することは、出来ません
「①その月の残業時間が30時間だった」「②その月に8時間欠勤した」場合に、給与計算上「①−②」で、22時間の残業代を付ける、という計算をしている場合を見かけます。残業時間と欠勤時間を相殺しているのですね。一見、正しく見えますが、正確には未払残業代が発生しています。その理由は、①は、残業時間帯のため時間単価が125%になります。それに対して②の時間単価は100%。単純に相殺すると、B(①の25%分)が相殺しきれていない事になります。
このような事例が発生した場合の、実務的な対処方法は、以下のいずれかとなります。
② 残業時間と欠勤時間を相殺し、相殺しきれない25%相当額Bの残業手当を支給する
③ 「終業時刻は午後●時とする。時間外労働は労働時間が8時間を超えた労働をいう」というように就業規則に定める
⇒このように記載すれば、実労働時間が8時間以内であれば残業代は生じません。
一度労働問題が起きれば、何のコストも掛けずに解決させる事は困難です。また、退職者とのトラブルは、何の利益も生みません。労働問題を回避する方法は、問題を発生させないための事前の施策のみだと、私は思います。
文:渡辺 雅人
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