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2015/12/09

個人事業における特別償却不足額の1年繰越の有用性を考える

生産性向上設備投資促進税制を適用するときは、通常100%即時償却を選択するパターンが多いと思います。それが一番、短期間での節税効果が高いからです。

 

仮に、設備を購入した年度の特別償却費計上前の利益が100で、特別償却費が300とします。(青色申告であることを前提としますね。) この場合、法人であればその年度の利益(課税所得)は△200となります。そして△200をその後9年間繰り越すことができます。 同じ前提で、個人事業者の場合だと、どうなるのでしょうか?

 

その年度の利益(課税所得)は△200の赤字となります。そして△200を、その後3年間 繰り越すことができます。法人だと9年。個人事業者だと3年と大きな差があります。 個人事業者の、この繰り越せる赤字を純損失の繰越しと呼びます。

 

高額な設備投資(イメージとしては、事業用建物や高額な専用機器を何台も必要とする事業)で、かつ利益回収が3年では難しいビジネスの場合には、純損失の繰越しが3年しかできないとなるとせっかく、即時償却をしても償却額の一部が結果として繰り越されなくなり、将来の利益と相殺できる償却費が消滅することが考えられます。

 

例えば、購入年度の即時償却前の利益が300で、即時償却額が1,000。その後の年利益が毎年200だとしたら・・・

購入年度の利益      △700 (利益300−即時償却1,000)←これが3年間繰り越せます。
2年目の利益     200
3年目の利益     200
4年目の利益     200
————————————————–
累計           △100

となり、この△100は繰り越すことができずに、消滅します。 即時償却したら逆に損をしてしまった・・・という笑えない話が起こり得るわけです。

 

この損が起きないように(起きてしまっても、損を少なくするように)する対策として、 即時償却額を敢えて100%計上せずに、購入年度の翌年に償却不足額を計上するという 節税プランが考えられます。例えば、購入年度は即時償却額を70%だけ計上し、 翌年に残りの30%を計上するというやり方です。

 

上記の設例に当てはめると、今回は購入5年目まで純損失の繰越しができるようになります。

購入年度の利益      △400 (利益300−即時償却700)←これが3年間繰り越せる
2年目の利益    △100 (利益200−即時償却不足額300)
3年目の利益     200
4年目の利益     200 ←購入年度の純損失△400の繰越がここで終了。  3年目・4年目は課税所得は生じない。
5年目の利益     200 ←2年目の純損失の繰越がここで終了。△100と相殺できます。


即時償却ができるとなると、ついつい全額100%を経費処理しがちですが、即時償却額が 大きすぎて、3年では繰り越し切れないと試算できる場合は、この特別償却不足額の繰越制度 を使うか、もしくは即時償却額を100%使うのを敢えて止めて、将来の普通償却に充てるというのも選択肢の一つとなるでしょう。

 

ちなみに特別償却不足額の繰越は1年しかできないので、2年目で不足額をいくら計上するかを見極める必要があります。 開業初年度に多額の設備投資を要する個人事業者は、一考の余地ありだと思われます。

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